エリア相南相双・トライカウンティーの情報誌WEB i-いんふぉ
passion
命を守る。人を笑顔にする。生きているからできる事。
〜福興浜団・上野敬幸(うえのたかゆき)さん〜


上野敬幸さん

土曜の朝9時、道の駅みなみそうま。この日は菜の花畑の追肥作業に10名程が集合し、萱浜の畑へ。毎年4月の下旬から5月の上旬にかけて開催する「菜の花迷路」の為の畑の手入れはこれから本格的になっていきます。すっかり原町区の春の風物詩になった迷路のはじまりを上野さんに伺いました。

津波で両親と子供2人を亡くしました。
父と息子はまだ見つかっていません。地震の直後は家族全員の無事を確認できていたのにその後の津波が家を直撃しました。
私は消防団だったので他の人の救助にあたっていて、今でも助けられなかった事を悔しく思っています。周り一帯津波に持って行かれ、我が家だけポツンと残されて、賑やかに暮らしていたのに子供達も親も居なくて、寂しくてたまらなくて。あの年の秋、家の前に菜の花を種を蒔きました。翌々年には代表をしている有志団体「福興浜団」のボランティアさんに手伝ってもらって迷路を作りました。震災の翌年に産まれた娘も今は大きくなり、一緒に作業をしてくれます。満開の菜の花の中を喜んで走ってくる子供達を見て、こちらも心が和みますね。

編:福興浜団は、もともとご遺体の捜索が目的の団体ですよね。

今でも捜索活動を続けています。津波にあった当初、原発事故の影響でなかなか自衛隊も警察も来てくれなかった。家族を探すには自分達が動くしか無かったんです。捜索と津波被害に遭った家の片付けが通年の活動です。近所の友人や関東、遠くは静岡から来てくれています。最初は原町区、次は小高、浪江、宮城県の山元町、今は大熊町にも行きます。

編:ある女性からの言葉が忘れられないとお聞きしました。

福島県内で「津波の被害だけだったら良かったのに」と言う言葉をかけられて愕然としました。岩手・宮城と違って福島は原発事故の被害があるという意味です。
これほど残酷な言葉があるかと思いました。その女性に限らず、福島県の人達は原発事故の事に目を奪われ過ぎていて、津波の犠牲になった命に向き合えていないのではと思う事があります。一度だけ慰霊祭に参加しましたが黙祷の際、沢山のカメラのシャッター音に「誰のための慰霊祭なのか」と、違和感を拭えず翌年から行っていません。その代わり、生きている者の命を守る事は常に考えています。娘にはいつも地震が来た時の避難先を確認させています。

編:夏には福興花火も開催していますね。

菜の花迷路もそうですが、人を笑顔にして、自分達も笑顔になる事をしようと言う想いでやっています。空の上の子供達と両親はどう思うかを考えて安心させてあげられるように、生き残った者にしかできない事を続けていきます。


> HOME
■南相馬営業所
〒979-2335
福島県南相馬市鹿島区鹿島御前の内19
(株)いんふぉ.南相馬営業所
TEL:0244-26-9181 FAX:0244-26-9182
info@i-info.jp