玉田香織さん
宮城県角田市の郊外にある御宅の一室が香織さんの工房。漆の跡がついた小さなテーブルと、道具と材料が収められた小さな引き出し。ここから生み出される作品はどれも丁寧で「職人の仕事」を感じる仕上がり。漆の香りがほのかに漂う工房で、香織さんにお話を伺いました。
編:漆との出会いはいつ、どちらで?
小さい頃から絵を描くのが好きで、将来は美術に関係する仕事が出来たらいいなと思い秋田公立美術工芸短期大学に進学しました。様々な選択コースがありましたが第一希望が定員いっぱいで入れず、第二希望の漆コースを選択。学ぶうちに手先を使う細かい作業や漆の素材や技法に面白みを感じ、ずっと漆を続けたいと思いました。卒業と同時に漆工芸の本場である会津若松の会津漆器技術後継者訓練校に入学して蒔絵の修行をしました。蒔絵というのは漆工芸の装飾法の一種で、漆で文様を描き,その上に金や銀,錫の粉や色粉を蒔いて固めたものです。絵柄のデザインから描き起こして漆器に転写し、一筆一筆時間をかけて色とりどりの漆で描いています。
編:玉田さんの蒔絵作品にはパンダやウサギ、猫、インコなどの動物、桜や椿などの植物のモチーフが多いですね。和の風合いを持ちながら現代的な可愛らしさがあって素敵です。
ありがとうございます。伝統工芸品は敷居が高くて特別な日だけに使うイメージがありますが、漆は丈夫で長持ち、傷んだら塗り直しが出来ます。漆器は使ってこそ。若い人にも漆器に興味を持ってもらえるように身近な動植物の他、最近はポピーやビオラなどを大人っぽいデザインで仕上げた器も出しています。
編:贈り物にオーダーする方もいるとか。
最近は自分用に注文する方も増えました。細かい手作業で描いていくので贈り物にする器は1ヶ月ほど制作期間を見ていただけると助かります。皆さんにもっと、見て楽しく使うほどに手に馴染む本物の漆器に触れて欲しいですね。