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passion
育てているのは、大熊町を紡ぐ人財。
〜ネクサスファームおおくま・徳田辰吾さん〜

 

昨年4月10日に避難指示が解除された大熊町大川原地区。地区の東端には町が整備した約3haの大規模「イチゴ養液栽培施設」が建っています。昨年4月から施設を借り受け、運営を行っている「ネクサスファームおおくま」の取締役兼工場長である徳田辰吾さんにお話を伺いました。

編:桜庭さんは双葉町のお生まれなんですね。双葉町の花も桜ですが、これは本名ですか?

農業の経験はありません。本職は調理師です。今回の事業の為に約2年間、植物の生態についての勉強や、実際にイチゴの栽培を行いながら準備を進めてきました。震災後に宮城県で野菜や米の事業に携わっていた事もあり、縁があって大熊町の事業にお声をかけて頂きました。食に関するビジネスやマネジメントの経験を活かして、農業でも安定した収益を上げるビジネスを構築する為、準備段階から関わりました。

編:生産物をイチゴに決めた理由は?

大熊町は「フルーツの香り漂うロマンの里」として、梨やキウイの出荷が盛んでしたが、震災により屋外での農業は難しい状況でした。なんとか農業を残していきたいという中で、屋内で栽培できる様々な作物を検討したそうです。イチゴは冬から春にかけて年1作が基本ですが、夏秋いちご(四季成り性品種)を取り入れる事で、夏から秋も栽培し、一年を通して出荷していく。それにより農業経営の安定化と、帰還する町民の安定雇用が可能になるのではないかと考え、イチゴに決めたと伺っています。

編:働いている人の半数以上が大熊町にお住まいだとか。

働く場所がなければ戻りたくても戻るのが難しいという現実はあると思います。大熊町で安心して生活する為には、働き先としての産業が必要で、帰還される町民や新しい町民を受け入れる事も私たちの役割の一つだと思っています。実際に、この会社で働きたいと他県から移住して働いている方や、この会社で働く為に帰還された町民の方もいらっしゃいますので、従業員さんの約7割が町に住んでいます。生産したイチゴは販売会社を通じて全国に出荷しています。数量限定で町内のヤマザキショップ様や、工場での直売もしています。

編:働きやすい作業環境と人材の育成にも力を入れているとお聞きしました。

弊社で働いている方は、ほとんどが農業未経験者です。若い社員、高齢のパートさん、障がいを持った人など様々な人が働いています。どのような人でも働きやすい環境をつくる努力を、会社として農業業界にも取り入れていく必要があると考えています。ハウス内環境はイチゴと働く人にとってバランスの良い環境をコンピュータで制御し、機械と人の作業を分業して、負担の少ない作業工程を組むように日々改善を繰り返しています。また、これからの農業と大熊町の為にも、20~30年先を見据えて、農業経営ができる人を育てていく必要があると思っています。大熊町の人達が自分の手で故郷の新しい形を紡いでいく事ができれば素敵ですよね。



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