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みんなの「南相馬の親戚の家」
「里山いちばん星」代表理事 星 巌(ほし・いわお)さん

 

南相馬市原町区の国道から1キロほど海側に入った山あいに田畑と牧場、その奥に並んだ蔵のギャラリーとカフェ、そして農家民宿。この小さな桃源郷のような場所「いちばん星」を運営しているのが星 巌さんです。開業8年めを迎える星さんに牧場でお話を伺いました。

編:「いちばん星」を始める前は市の職員だったそうですね。

震災直後からその年の冬まで避難所の運営を担当していました。当時、県内外から集まってくれたボランティアの宿泊先が足りず困った経験からと、避難所で一度は親交を深めた避難者がそれぞれの避難先へバラバラになっていく様子を目の当たりにした経験から「人と人との絆を保つには新しいコミュニティーづくりと、その中心になる場所が必要」との思いを強くしました。定年を5年残して退職し、自宅を改装して2012年に開いた農家民宿には今まで全国・海外からのべ5千人ものボランティアさんが訪れました。出荷制限で一度途切れた地域の農業をなんとかしようと、地元の農家と協力して震災前の価格で線量検査した野菜を「旬・直・おすすめ便」として販売を5年行なっていましたが、地元の農産物が震災前と同様に地元で購入されるようになったのを見届けて2017年に終了しました。

編:生産物をイチゴに決めた理由は?

大熊町は「フルーツの香り漂うロマンの里」として、梨やキウイの出荷が盛んでしたが、震災により屋外での農業は難しい状況でした。なんとか農業を残していきたいという中で、屋内で栽培できる様々な作物を検討したそうです。イチゴは冬から春にかけて年1作が基本ですが、夏秋いちご(四季成り性品種)を取り入れる事で、夏から秋も栽培し、一年を通して出荷していく。それにより農業経営の安定化と、帰還する町民の安定雇用が可能になるのではないかと考え、イチゴに決めたと伺っています。

編:2013年にはアルパカ牧場、2015年には離れに大浴場、2017年にはカフェと蔵を活かしたギャラリーがオープンしましたね。毎年行われるイベントも人気だとか。

傷ついた故郷を立て直したいとの思いから、訪れる人たちが心癒され楽しめる場所を作りたいと様々な仕掛けを考えてきました。動物とのふれあい、地元の野菜を使った美味しい料理、イベント等それらを通した交流を大事にしたいです。大浴場は昨年の台風で断水した地域の皆さんに無料開放してお役に立つ事ができました。今度は漁業との連携を考えています。本操業はこれからですが、農家民宿と漁業者とが協力しあって漁業体験ツアーなどをどのように企画していくかが課題です。子ども達が楽しめるような自然公園も更に整備していきたいですね。核家族化が進む現代、親戚のような温かい交流を通して南相馬の魅力を沢山の方に体験して欲しいです。今は世界的に大変な状況を迎えていますが、みんなで乗り越えてまた笑顔でお会いしたいですね。



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