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花言葉は「希望」この町で、花と希望を育てていく。
〜浪江町 NPO法人Jin 代表 清水 裕香里さん〜

清水裕香里さん

 双葉郡浪江町に8月にオープンした「道の駅なみえ」の直売所では、華やかなトルコギキョウのアレンジや花束が、訪れた人を出迎えてくれます。花の出荷元のひとっ、この町で15年前から地域に根ざした福祉施設の運営団体「Jin」の設立者である川村博さんから、今年の5月に代表を受け継いだのが清水裕香里さんです。浪江町の幾世橋にあるハウスでお話を伺いました。

  編:一体どの<らい生産しているのですか?花を始めたきっかけは?

 業務用の花井をおよそ65a作付けして東京の市場に出荷しています。震災前から浪江町で「一樹デイサービスセンター」という高齢者・障害児者の通所施設を運営していましたが、原発事故により全町避難を余儀なくされ、2年後にやっと時間制限の立ち入りを許されました。荒れ果て、色を失った町を目の当たりにして「ここに花を植えよう」と思い立ちました。6千本のチューリップの球根を植え、翌年の春には色とりどりの花を咲かせたのです。家の片付けで町に戻って来た人たちがその花々を見て喜び、声をかけてくれました。次の年から毎年、浪江町に戻る人も戻らない人も綺麗な花で迎えたい、花はいいなあと思いました。ちょうど野菜の出荷を断念した時に花の栽培を勧められやってみようという気持ちにもなりました。(野菜もその後、出荷制限がなくなり栽培を再開しました)
 花に関しては素人でしたが、1年半かけて県外の花丼栽培のプロの元に通いました。指導を忠実に守った事が功を奏し、メインで始めたトルコギキョウの品質が評価されるようになり、花丼販売事業の本格化で「Jinふる〜る」の屋号も取得しました。
 活動が軌道に乗り始めた矢先の今年の春、全国に広がったコロナウィルス感染症の影響を受けました。イベントや結婚式の中止などで花の需要縮小の煽りを受け、花の単価の下落や消毒に必要な消耗品の購入の増加などもあり、花井は昨年度比6割の減収になる見込みです。その分、野菜の栽培を3倍に増やして浪江町に戻ってきている高齢者と共に作業し、漬物などの加工品やお惣菜も作って直売所などで販売したり、業務向けだった花井も幅広く使っていただけるように仕立てを変え、道の駅なみえの他には南相馬イオンの産直コーナー「大地」でも販売しています。

編:これからの「Jun」はどんな場所にしたいですか?

 理想を言えばきりがないし、希望を持てないのもつまらない。いつでも地に足をつけた生き方をしたいと思います。口に出すことは「夢物語」ではなく、口にしたことは実行しなければいけないと思います。
 私達は福祉と農業の2本の柱で動いていますが、その2つがお互いに支えあい、体も心もお財布の中身も豊かになれる所にしたいと考えています。ICT(情報通信技術)を活用した作業時間の削減や収益の安定など、「若者が浪江町で農業を営みたいと思う事業スタイル」を、もっと確かなものにしていきたいと思います。



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