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「野馬追の後」も安心して暮らせる馬の棲家を
〜厩舎みちくさ 代表 渡部 南 さん〜

 

 南相馬市小高区の大富地区の広大な牧草地と牛舎を活用した厩舎。ここで 10頭の馬達のお世話をしている「厩舎みちくさ」のオーナー、渡部南さんにお話を伺いました。

 渡部さんは広島県の出身。子供の頃からの馬好きが高じて、高校卒業後に乗馬指導者養成教育(JRA馬事公苑)を修了、千葉や茨城で乗馬のインストラクターとして働いていました。はじめて南相馬市を訪れたのは震災後の2011年5月、NPO法人・引退馬協会から被災馬のお世話をする為に派遣された時でした。

「警戒区域に取り残される寸前だった馬達が、一人の馬主さんの働きかけで浪江と南相馬、合計33頭の馬達が無形文化財の為の特例措置で、正式に20キロ圏内から避難することが出来ました。そのうちの3頭がおに君(ナイキプラネット)、おでことマロンで、テンとティアラが警戒区域になる前にポニー牧場に避難した子です。マロンを保護した時は痩せこけて瀕死状態でしたが野馬追にも参加できる程回復しました。」

 南相馬で過ごすうちに、生活の中に馬が溶け込んだこの地に惹かれ「ここで馬の仕事をしたい」と願うようになったと言います。半年の活動後、渡部さんは引き取った被災馬と共に宮城県の乗馬施設で働き、2016年7月、避難指示が解除された小高に移住して「厩舎みちくさ」を開業。原発事故の前に和牛を育てていた方から牛舎を借りて厩舎に改装しました。

「牧場主さんは事故当時、すぐに避難先から戻れると思い、40頭の牛達を牛舎に残しましたが全て餓死や国や県の指示で殺処分となりました。その場所で今、助けられた馬たちが暮らしている事に、言い尽くせない想いがあります」

 被災馬の保護ではじまり、開業5年目。馬の預かり事業が運営のメインとなり、現在7頭の預託馬と3頭の所有馬がのびのびと過ごしています。餌は品質にこだわった自家製牧草が中心で、一頭一頭にあった世話をしている渡部さん。体調を崩した馬を療養させると元気になるという評判で県外の馬主さんからも依頼があるそうです。

「訓練や体調を整えて第二、第三の馬主さんに引き継いだり、競馬や野馬追から引退した馬の「馬生」を最期まで全うさせたい。ここはそれが実現できる場所。将来的には地域づくりとして乗馬の他にも観光客向けの活動も充実させたいので、インストラクターの雇用も考えています。」ヴァーゲンザイル君へ温かい眼差しを向けながら話す渡部さんでした。

■厩舎みちくさ(Stable Michikusa)
南相馬市小高区大富字北谷地314
お問合せはFacebokのメッセージ、またはTEL 080-8398-3188
見学と乗馬は3日前までの予約、1日1組、1頭1鞍限定
見学・乗馬 9:00〜17:00
https://www.facebook.com/umanoie



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