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passion
花づくりでたくさんの人を笑顔にしたい
〜hinataba 菊地直樹さん・沙奈さん〜

 南相馬市小高区の、昨年廃校になった鳩原小学校にほど近い丘に小さな木造りのお店があります。震災前は「日向ぼっこ」という農産物直売所だったその場所に「hinataba」と名付けられたお店があります。出荷作業の部屋と、ご夫婦手作りのリースや花束が並ぶスペースがあり、徒歩で数分丘を下りた場所には約2ha程のビニルハウスと樹木の苗畑が広がっています。ピンク色のカスミソウが咲き始めたハウスでお二人にお話を伺いました。

 直樹さんが福島市、沙奈さんは矢吹町出身。直樹さんは東京農業大学で学んだ後に銀行に就職、そこで同僚だった沙奈さんと出逢いました。沙奈さんの祖母の家は全国でも有名なカスミソウの産地である昭和村の花農家。「花で人に喜ばれる仕事をしたい」と決意し、銀行を退職して昭和村でカスミソウ栽培をベテラン生産者から学びました。

「花卉栽培の経営を通年で安定させたい」昭和村は豪雪地帯だった為、冬場も花を生産できる地域を求めて相双地域の沿岸で栽培を始めましたが、津波あとの塩害でうまくいきませんでした。縁あって今の場所にたどり着き、人と運に恵まれた事に感謝したそうです。
 地主さんは震災前まで大根栽培をしていた農家。広い土地に大きな倉庫と農業用冷蔵庫があり、夏場の花の管理に最適な環境が揃っていたこともあって、2020年の秋に小高区南鳩原で「hinataba」をスタートしました。新天地でカスミソウの栽培からはじめた初年度は昭和村とは気候や土壌が違っていたせいか思うようにいかなかったと言います。冬場の花卉栽培の産地である熊本県の生産農家へ研修に出向き、技術と知識を学んで生産と経営を軌道に乗せ、2020年の12月、お二人は結婚しました。

 最初はカスミソウだけだった花も1月からのラナンキュラス、3月のアネモネやストックなど季節によって15種類以上に増え、ミモザなどの樹木も栽培するようになりました。市場への出荷が売上のメインですが自社サイトからのネット販売も並行し、「お客様のニーズに合わせた花の生産」と「生産者の顔と想いが伝わる販売のかたち」を実現しました。2021年2月から店舗販売も始まって「お客様の顔も見える」形になり、昨年好評だった「ラナンキュラスの摘取り体験」を今年も2月頃から開催予定です。

「2022年は花の品質をもっと向上させて沢山のお客様に笑顔を届けたい」そのための勉強を常に続けているというお二人。かつての「花の産地・小高」が新しい形で復興していると感じました。

*hinataba
 南相馬市小高区南鳩原台畑128
*KIRA(委託販売)
 南相馬市小高区東町1丁目37
 営業: 水木金土 10:00〜17:00



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