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passion
30年先の未来の為に、浜の「扉」を開けていく。
〜HAMADOORI 13 代表 吉田 学さん〜

 生まれも育ちも、震災直前まで暮らしていた場所も大熊町の吉田さん。東京電力福島第一原子力発電所構内で業務中に震災を経験し、収束作業にも携わりました。家族と共に関東への避難を経て現在、単身で本店が大熊町の建築士事務所を営んでいます。震災数年後から建物の調査業務で避難指示解除前の地域を回ることが多かった吉田さんは、同じ被災地域でも復興に時差があると感じていました。

 国や行政主体の復興から、民間が連携し、民間が主導する官民連携型の復興の必要性を感じ、自分達に何か出来ることは無いかと、6年程前から地元の友人、法人会青年部、商工会青年部、青年会議所などの各団体メンバーと話し合い、2020年に浜通りの全13市町村から仲間を集って、任意団体HAMADOORI 13(はまどおりサーティーン)を発足。自分達の地域でやりたい事を話し、メンバー同士でお互いに助け合う活動を進めてきました。徐々に参加する人が増え、福島県の浜通り全13市町村の、主に原発事故で避難を強いられていた双葉郡や南相馬市で暮らしていた企業経営者や自営業者などが、広域的に連携して地域の活性化や産業復興に取り組み、持続可能な団体を目指して、2021年1月に、一般社団法人HAMADOORI 13を設立しました。

 メンバーは30〜40代が中心。若者の積極的な発言や活動を促す狙いで「50歳以上はアンバサダーとして知恵とお金だけ出して貰う」という特別ルールがあります。先の未来を見据え、遠くない将来に自らが意思決定に係る権限を失うリスクを負ってでも、若手を育ていこうという気持ちで設けたといいます。

 福島県浜通り地域の復興、発展に向けた取り組みは若者の参画が不可欠であると考え、起業や新規事業活動を行う若者を支援し事業化へ導き、若者が主体的に考え未来を担っていく地域にしていくことを目的として、浜通りで独自の事業で活躍する若手の起業家を育てる事業が昨年、「フェニックス・プロジェクト」という形でスタートしました。1989年4月2日以降生まれで、起業時点で浜通り13市町村内に事業所を置いて事業展開をする事などが応募条件です。

「震災時に学生だった子達がこの地域の未来を作っていくんです。」という吉田さん。公益財団法人東日本大震災復興支援財団の協力を得て、起業と実施に係る必要な経費を年間1,000万円を返済不要で支給。第1期は13団体が応募し、厳しい審査を経て採択された4団体5名が今年の1月に決定しました。

 選ばれた若手起業者の事業は、生産者と共に実験的なお酒醸造するシェアブルワリー事業、古民家カフェ及びコワーキングスペースの創出事業、オンラインとオフラインを融合した留学体験事業、商業跡地を活用した農業・文化芸術・ワークショップなどのテナント事業など様々。5人それぞれにHAMADOORI13の先輩経営者メンバーが起業・運営について知恵と人脈で支援しながら、事業継続を目指して伴走支援していきます。

 かつては地域の商工会などで自然に先輩から後輩へ受け渡され受け継がれてきた町の産業。震災で途切れたその「受け継ぎ」を担うプロジェクトは始まったばかり。次の「未来のまちの賑わい」を創る種まきは今後も続いていきます。


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