国の指定重要無形民俗文化財「相馬野馬追」を開催する団体が今年の2月に総会を開き、騎馬武者の「女性は未婚の20歳未満」という参加条件の撤廃を決定。条件が1984年に明文化されて以来初の変更で、今年5月の開催から適用になります。4月の総会で9名の20歳以上の女性の応募が報告され、騎馬武者として認められました。小高郷(南相馬市小高区の江戸時代の呼び方)の武田優実子さん(24歳)もそのひとり。南相馬市の馬事公苑で乗馬練習に励む武田さんにお話を伺いました。
私の母は小高区で祖父の代から野馬追の為の馬をお世話をしたり、高校の馬術部で競技に参加していました。出産や子育てで馬から離れていた時期もあったそうですが、野馬追や馬術大会の手伝いは少しづつ続けていたそうです。私が幼い頃、母から馬に乗せてもらった事をよく覚えています。
2019年3月に震災時からの避難先だった新潟県の高校を卒業して小高区に帰還後、乗馬に興味を持ってジム・カーナ(馬術競技の一種でスラロームなどの乗馬初心者向け競技)に出場。野馬追に参加する準備をしていた2020年にコロナの影響で野馬追行事の縮小と御行列を行わない事が決まり、20歳前に出場する事は叶わなくなりました。翌年も縮小した規模の開催で、その年に私は20歳になっていたので、もし通常規模で開催されていたとしても参加は不可能でした。
2022年3月、相馬野馬追の執行委員会は、コロナ禍で出場できなかった20歳と21歳の女性騎馬武者の参加を認める特例措置を決定。21歳になっていた私も騎馬隊として参加しました。「もう野馬追には参加できない」と諦めていたのでとても嬉しかったです。その翌年から昨年までは、馬には乗っていませんでしたが野馬追のお手伝いをしていました。
今年の2月に女性の年齢条件が撤廃された時、2022年の7月が「騎馬武者として最初で最後の野馬追」だと思っていたのが一転したので、このチャンスを逃すまいと「もう一度、参加したい」と小高郷の会長である本田博信さんに願い出ました。出るからには立派に馬を乗りこなした姿で参加しなければという思いで練習しています。
私の参加予定は野馬追の一日目5月24日、小高区の相馬小高神社御発輦(出発の儀式)と雲雀ヶ原祭場地の御本陣到着。二日目の25日に原町区小川橋付近から雲雀ヶ原祭場地までの御行列と、小高駅前通り周辺の帰り馬。三日目の26日に相馬小高神社で開催される神事、野馬懸です。雲雀ヶ原祭場地内は有料ですが御行列は無料で観られる行事なので是非、多くの方々に足を運んでいただきたいです。