辺見さんに初めて会ったのは、昨年の春。富岡町議会の議員選挙の準備中で忙しい中でもフレンドリーに対応してくれました。今回の取材の前後も、行き会う人毎に「たまちゃん」と呼ばれていたのが印象的。議員の職務をこなしながら多方面での活動を続けている辺見さんにお話を伺いました。
生まれも育ちも東京都。大学で原子力を学び、電力会社への就職を希望していました。震災時に真っ先に頭に浮かんだ東京電力福島第一原子力発電所は、その1ヶ月前に見学に行ったばかりでした。自分が学んできた事を揺るがされたような衝撃でしたが「今、自分ができる事をしなければ」と、福島県の空間線量の測定と土壌採取のボランティアに参加したのがその後の福島との深いかかわりの始まりでした。その後、東京で富岡町から避難してきた子供たちへの学習支援に参加しているうちに福島県で働く事を真剣に考えるようになり、大学を卒業した2012年、福島大学のサテライト機関で放射線を調査する職員として採用されました。着任先の川内村で住民の方と交流しているうちに村での暮らしが気にいってしまい、任期を終えたあとも「川内盛り上げっ課」を立ち上げて活動していました。福島県に来た当初の「復興の助けになりたい」という使命感は徐々に「地元の人たちと一緒に暮らしを楽しんでいこう」と意識が変わっていきました。
その後いわき市にも住みましたが、友人たちがいる双葉郡に住みたいという気持ちが強く、その友人のひとりに紹介してもらった家があったのが富岡町でした。
富岡町で最初に借りた家のお隣さんと一緒に2020年から始めたのが 「とみおかこども食堂」です。当時は地域で子育てしている親同士、子ども同士が知り合う場所が少なかったのですが、親子や子供がいない大人も食卓を囲んでゆるくつながれるコミュニティ食堂として定着しつつあります。そこで聞こえてくる声や、2021年から働いていた「とみおかプラス」での移住関係の仕事を通して、住民が感じている「ここがこうなったら良いな」という声を届けて今よりもっと暮らしやすい町にしたいという気持ちで昨年立候補して議員になりました。
私は突然眠ってしまうナルコレプシーと、躁うつと言われる双極性障害、発達障害のADHDを持っていますが、発達障害や精神疾患への理解度や認知度の低さから生きにくさを感じて悩んでいる人達が相双地域にもたくさん居ます。そういった人たちが本音を話せたり勉強の場として「きゃべつの葉っぱ」という集まりを開催しています。様々な障がいの事をみんながなんとなく知っていて、人と違った事も「そういうこともある」と受け入れられる社会をみんなで作れたらいいなと思いながら活動しています。