
浪江町の武内秀子さん宅のリビングで、秀子さんのピアノ伴奏に乗せて良太朗さんがヴァイオリンの音色を美しく響かせる贅沢な時間を過ごさせていただきました。埼玉県からご縁があって親子で移住してきたお二人。今回は秀子さんからお話を伺いました。
移住前は埼玉県草加市で暮らしていました。大震災の後に被災地で何かお手伝いができないだろうかと考えていた時に、お付き合いがあったカトリック教会のシスターで浪江町請戸出身の方から紹介された「カリタス南相馬」を通して、2018年から福島県浜通りの復興団地や小高交流センター等での演奏会を年に2回、6年程開催、2020年にオープンした道の駅なみえでも演奏するなど南相馬市や浪江町の方々との交流を重ねてきました。2022年に実母が亡くなって埼玉に住み続ける理由が無くなり移住を検討していたところ、いい物件に出会えたので2023年に思い切って浪江町に引っ越してきました。移住にともない良太朗はこれまでの勤めを辞めなければならず、それならばイタリアへ音楽留学をしようと、これも思い切って挑戦しました。昨年2年間の留学を終えた良太朗は本人の希望もあり、浪江町内の「ボスコみらいセンター」(旧青田荘)に管理人見習いとして住みながら、コンサートの打ち合わせや練習合わせの時に私の家に来ています。
良太朗とヴァイオリンとの出会いは7歳から。幼い頃から言葉がなかなか出ずに心配していましたが、音楽は好きで歌は上手だったので児童合唱団に加入、ピアノも習わせました。何時間でも飽きずに練習するのでピアノの他に何かソロで出来る楽器を探していた所、ヴァイオリンに触れる機会を得て本人が興味を持ったので市内の教室に通い、徐々にヴァイオリンに魅了されて十歳から本格的に取り組みました。7歳で始めた頃はまだ楽譜がうまく読めず、私が根気よく教えました。時間はかかりましたが、ある時一気に読めるようになって、そこからは一層練習に集中するように。上野学院大学卒業後は、米国カーネギーホール他、海外演奏の機会も頂き、イタリア音楽留学ではシエナ音楽院の大学院に通い、昨年5月には第12回「クララ・シューマン国際コンクール」にて第1位を受賞しました。留学中は先生方と学生たち、住んでいた小さな村での気さくなイタリアの人々との日常の交流などたくさんの貴重な体験を通して、精神的にたくましくなったのも大きな財産です。留学後は演奏が「より繊細に」「より力強く」なった、とのお声も頂きました。
浪江町は豊かな自然と穏やかな町民の暮らしが息づいていますが、同時に復興で町が変わりつつもあります。新しくなる町を見守りながら、音楽活動を続けていきたいと思っています。
